オツベルと象

中学校んとき、国語の教科書に、宮沢賢治さんの「オツベルと象」という作品が掲載されていた。教科書に載る程なんだから、余っ程文学的に優れた作品なのでしょう。あたしは宮沢さんの世界は理解しきれていませんが。

で、「オツベル」の最後の行は「おや、(一字不明)川に入っちゃいけないったら」で終わるんですね。この「(一字不明)」がどうしても気になって仕方なかったんですよ、当時。

そいで、国語の担当教師に聞きましたよ。この不明の一字って判るモンですかねぇ、と。
そしたら、国語の教師は「次回までに調べておく」と言いましたよ。
今考えると、学者でも判らないから教科書にわざわざ「一字不明」とあるんですが、そこは国語の教師、プライドが傷つけられてはいかんときちんと答えてくれました。

「おや、まぁ」

この歳になると端っからうたぐってかかるんですが、当時まだ純朴な中学生ですから。本気で信じましたよ。
「おや、まぁ。川に入っちゃいけないったら」
きっとそうなんだろうと思いましたよ。
「一字不明」なのに、「まぁ」だと二字なんですよね。
当時はまだ純朴な中学生ですから。本気で信じましたよ。
大人になるにつれ、心が次第に荒んでいく。そうすると、矛盾ばかり見えてくる。
とりあえず、誰も知らないんだから、「おや、まぁ」で正解としておくのが良いんだろうと最近は思うようになったのでありますよ。
今考えるとその国語の教師、現在のあたしの年齢より少々若かったんではないでしょうかねぇ。それを考えると複雑な気持ちでございます。はい。

だから最近の口癖は、ちょいと吃驚するとついつい「おや、まぁ」と云ってしまいます。
あたしの近くに居るかたはチェックしてみてください。自分でもイヤになるんですね、口癖って。